蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

過去の輸入食品中の放射能濃度を調べてみた(その2)

前回に続き、今回は東京都健康安全研究センターの年報のデータを整理しました。
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/index-j.html

ただし、放射能濃度を過去23年分まとめられているものはありません。そのため、自分でデータを抜き出しました。
・・・合計20報ですので、データを抜きだして整理するだけで疲れました(^◇^;)
そのデータを一覧にして、考察してみたいと思います。


さて、まずはどれだけ検査したかをグラフ化しました。
平均して大体年間300くらい検査しています。

輸入食品のスクリーニング法で定められている50Bq/kg以上、暫定規制値である370Bq/kg、そして日本での新基準値になる100Bq/kgの件数もグラフに載せました。
(この結果に折れ線グラフは似合わないと思ったので棒グラフ)

・・・検査総数と比べるとあまりにも検出率が低いので、一緒に並べるとほとんど見えません。
なので、次は数値が出たもののグラフを見てみましょう。

さて、どのように見えますでしょうか?

あ、あとこのグラフは、50、100、370と分けてはいますが、以下のように作製しています。
トータル数:50Bq/kg以上検出した数、100Bq/kg:トータル数のうち100Bq/kg以上検出した数、370Bq/kg:トータル数のうち370Bq/kg以上検出した数

さて、チェルノブイリの事故が1986年ですから、最初の調査では検出数が多いです。
それ以降、1996年まで順調に下がっているように見えます。ただ、これは輸入制限がかかっていたり、輸入先をヨーロッパ以外に切り替えたりしていたのではないかと個人的には想像しています。
(何らかの関連データが見つかったら追記します)

で、1998年から検出数が上がりました。(といっても10前後ですが)それ以降は、検出数については大きな変化がない気がします。
ただ、100Bq/kg超えの数は、23年間通して大きな差があるとは思えません。これは、なぜでしょうか?
これは、作物の種類に関係しているのでしょう。

ご存じの方も多いでしょうが、それはキノコ類です。
セシウムを検出した作物のうち、キノコ類のみを抜き出して整理してみました。

ここで注目して欲しいのが暫定規制値を超えたキノコの種類です。
ピエ・ド・ムトン(カノシタ)とジロル(アンズダケ)の2種です。正確には、キノコの種類じゃなくて(生)のところです。

乾燥ではなく生の方が規制値超えをしているというこの事実・・・。
国内でも自生している野生キノコは数十年にわたって汚染される可能性が高いことが示唆されてます。

たまーに食べる程度(例えば年に一回程度)キノコ狩りして食べるくらいなら個人的には許容範囲と思いますが、少なくとも常食することは避けた方がベターかと思います。
(しかしなんで生のキノコがこんなに輸入されているのだろう・・・?フランス料理の高級食材としてかなぁ?)

(あと、表の最後の椎茸・・・日本産1988年度のものです。チェルノブイリ事故の影響はさすがに受けていないはずなので、それ以前の大気圏核実験由来と思われます)


キノコ以外のもまとめてみました。

ここでは、まずブルーベリージャムが目につきます。
ブルーベリーは酸性土壌で育つことでセシウムが移行しやすい条件であること、その土を旧ソビエト領から持ってきているらしいとのことで、高めの数値になる傾向があります。

そして、次にあげたのは蜂蜜です。暫定規制値未満ではありますが、それなりの数値が出ています。
2012.3.20時点で公的に調査されている蜂蜜をここで調べてみたところ・・・8件中3件から数値が出ています。

・・・過去に検出例がありながら、まだそれだけしか検査してなかったの?
このような過去のデータがあるのですから、全国レベルでサンプリング計画はもっと適切に効率的になるように練り直してもらいたいものです。

あとはセージ、ローレルなどのハーブ類からは数が多いですが、これは乾燥しているので日本でいえばお茶と同様の現象だと考えます。
あ、紅茶もね。

そしてヘーゼルナッツ・・・これは数値よりも原産国を見てください。アメリカです。
アメリカのはさすがにチェルノブイリ由来とは考えられないので、核実験の影響が残っているものと推測します。

あと、ある意味有名なトナカイ肉。
これについては、次の表をあげてから考察したいと思います。


今度は100Bq以上検出した作物とCs137、Cs134の濃度を小分けにしたものです。

まず、Cs134の欄を見てください。この表では、1997年から検出されていません。(=ND)
(この表にはありませんが、正確には1995年から検出されてません)

Cs134の半減期は2年なので、ラフにいって大体理屈通りか、それより若干早く無くなっています。
日本でも10年後にはCs134は定量限界以下になっていくのでしょうね。

ここで1989年のトナカイ肉の結果をみてください。
Cs137:380Bq/kg、Cs134: ND
1989年はチェルノブイリ事故から3年後。半減期の理屈から言えば、Cs134がまだ検出できるレベルにあるはずです。
それがNDということは・・・チェルノブイリ由来よりも大気圏核実験の影響の方が大きい可能性があることを示唆しています。
実際、このときの年報にもそのように考察されています。


その他
50Bq/kg以下ですが、NaI検出器で数値が出た作物をいくつか箇条書きしていきます。(作物名、セシウムの濃度Bq/kg、原産国の順で)

ハイビスカス 30 ドイツ
ペパーミント 30 ブルガリア
シナモン 30 中国
チョコレート 34 スイス
イワシオイル漬 33 デンマーク
ホワイトペッパー、27、ドイツ
麦芽、27,カナダ
シナモンスティック、37,インドネシア
ブラジルナッツ、38,ブラジル

チェルノブイリ由来と考えられるのもあれば、関係ないだろうというものもあります。
個人的には、核実験の影響は世界中なのだなぁ・・・と思いました。


データを整理していくつか考察しましたが・・・
・すでに言われているように、野生のキノコ類は要注意食材である
・過去に検出例がある蜂蜜のような作物は、もっと調査すべきである
・もっとサンプリングの質を高める必要がある(牛肉の検査はもうそろそろいいでしょ・・・)

とりあえずこんな感じでまとめて今回の記事を終わりにしたいと思います。

※これだけ膨大なデータなので、一部ミスがあるかもしれませんが、ご容赦ください。