蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

カビ毒に汚染・・・されてません

7月発売されたとある週刊誌に、こんな見出しの記事がありました。

40代男の体内に!「カビ毒」こんなに住んでいる

 

その後しばらくして、Web上でも記事があがりました。

ガンにアルツハイマー…あなたも「カビ毒」に汚染されている(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース

 

この記事、カビ毒を知ってる人からするとおかしなことだらけなのですが…

カビ毒って農薬や食品添加物と違って検証されずに放置されそうなので、

私がおかしなところをとりあえずざっくりと書いていきます。

 

・カビ毒を作るカビは種類が限定される。

例えば元記事で黒麹カビとか書かれているアスペルギウス属。

見出しではこれがアルツハイマーを…などと恐怖を煽ってますが

黒麹カビがすべてカビ毒を持ってるわけでも作るわけでもありません。

というか、相当限定されます。

(カビ毒のアフラトキシンを産生するカビは代表的なのは2種類、

オクラトキシンというカビ毒を作るカビだと4種類くらい)

 

で、家の水回りとか家庭で生える黒麹カビは、まずカビ毒作りません

その他の家庭で見られるカビも、カビ毒は作りません

(ただし、カビを放置しているとカビの胞子によるアレルギーやぜんそくなどの病気になる可能性があるので、カビ毒を作らないからといって放置していていいものではない。しかしそれはカビそのものの問題であって、カビ毒ではない)

 

・オクラトキシンAの毒性は腎臓特異性。しかも、オクラトキシンが原因で人間が病気になったと確定された事例は存在しません。(関係があると言われていたバルカン腎症ですら、可能性は低いのです。)

で、アルツハイマーとカビ毒の関係って、食品検査の私の知見では…聞いたこと無いです。そんな重大な病気に関連あるなら、論文書くときに引用文献として確実に書きます。

一応元論文らしきものを読んでみたのですが…

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4789584/

本文中ではカビ毒が関係ありそうなことは書いてありますが、引用文献がついてないのですよ。本当に関係があるのなら、少なくとも文献の2つや3つくらいつきそうなものです。

つまり、この論文では筆者の考えが書かれているだけで、根拠はないってことになってしまうのですよね…。

 

・尿中のカビ毒の検査は怪しい。

食品中の検査ではppbオーダーで検査しますし出来ますが、尿中や血中の検査が同レベルでできるとは思えません。(基本的に生体試料の方が検査は困難)

…というか、雑誌の元記事の図には、こんな注意書きがあるのですよ。

 

”この検査はFDA承認を受けていません。”

 

要するに、アメリカの検査機関といっても正しい検査をしている保証がないのです。

検査機関でよく見る証明書の形式も見当たらないし…。

 

・土や植物、埃、空調設備に存在…していません。

もし存在していたら、あちこちから検出されてまともな検査出来なくなります。

 

・ロリジンEとベルカリンAはトリコテセン系ではあるが、カエンタケの毒素、すなわちキノコ毒であって、カビ毒ではない。

エニアチンはフザリウム属が作るとされているが、通常カビ毒に分類しない。

ミコフェノール酸は、普通に検索するとミコフェノール酸 モフェチル(薬の名前)と出てくる。

ミコフェノール酸というカビ毒ってのは…まああるけど現実的に汚染はない。

 

まあ今回は個別に間違ってるところを指摘するって感じにしました。

 

 

カビ毒についてはここ2年ほど、Web上の記事で書かれるケースが増えてきたと感じてますが…

今回取り上げたものに限らず、大体カビ毒に関する記事は誤っていますね。

後日ポイントをわかりやすく書いて…みたいなぁ…

(書いてもわかりやすくなる自信があまりない(^◇^;))