蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

あさイチ検証番組の検証

まず、このような検証をしてくれたことを素直に評価しよう。

あさイチ公式HP
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/12/15/01.html

首都大学東京からも謝罪文でてました。
http://www.tmu.ac.jp/news/topics/4215.html?d=assets/files/download/news/NHK_asaiti111129.pdf

なぜ間違えたのか、その原因がわからないとなんだかんだでスッキリしませんし、間違った結果や憶測が一人歩きするのは問題ですからね。


さて、放送時間帯はAM8:15〜と、とてもリアルタイムでは見れないので、私は帰宅後録画しておいたのを視聴しました。

実際にみたのと、放送されて一週間経過して周りの意見というか情報がある程度そろってきたので、この検証番組を検証してみよう。
…というか、気がついたことを色々語ってみよう。

1.再分析したデータについて
・検出限界は、大体5Bq/kg前後であった。
これは主にU-8容器(容量:約100mL)を使用したため。
ネット上の一部には、より低濃度まで測定出来るマリネリ容器(約2L)の方がよかったのでは?という意見がみられたし、内部暴露量を推定するには感度不足な気もするけれど…
家庭で詰めてもらうためにあえてU-8を選択したのかな?
(家庭で、特殊な形していて値段も高いマリネリ容器に詰めてもらうってのは、さすがに現実的ではないですね)

・Ge半導体検出器は、色からするとたぶんキャンベラ社製。さすがに形式まではわかりません(フランスのメーカー。信頼度は高い)

・間違いの理由とされた説明は私の予想通り。Bi214の609keVをCs134の605keVの方と間違えていた。(ちなみにCs134には796keV のエネルギーもある)
https://twitter.com/#!/ebi_j9/status/139678894503632896
正直、スペクトルを見て、Cs134にあるもう一つのエネルギーがないとか、Cs137がないといった時点で機器の確認をしてもらいたかった。
…いや、それ以前の問題として、校正用線源使ってピークフィットと呼ばれる作業をあまりしていなかったと個人的には推測する。(ちゃんとした分析機関なら、毎日行う作業)
ただ、ピークの誤認識はこの理屈で説明つくけど、これだけでは食品中からBi214が検出された説明は付けにくい。
Bi(ビスマス)214は、ラドン由来の天然放射性核種なので、食品には通常存在しないもののはずなんだけどなぁ…。
宮城県HPより
http://www.miyagi-gc.gr.jp/html/QA/amegahuruto.htm

これは次のスペクトルの画面で理由がわかりました。


・スペクトル…なぜかNHKのアナウンサーはグラフと表現してましたが、スペクトルといいます。スペクトルそのものは専門用語でしょうが、普通のグラフとは意味合いが違うのですからスペクトルでそのまま押し切って欲しかった。
(グラフのような物という例えならまだ許したけど、グラフと言い換えちゃったからなぁ)

で、どアップで見せてくれました。おかげでちゃんとスペクトル見ることができました。
こっちが全体図。

で、これが本命のCs134とBi214が見える拡大図。

…これ、完全にノイズレベル
Ge半導体検出器については、一応講習は受けたけど使ったことない私ですら…
これからCsとかの放射性物質のスペクトルが読み取れるとの判断はしない。コンプトン散乱とかのピークに埋もれちゃってるよ、これ。
NDレベルといえる。

この画像、Ge半導体検出器のスペクトルの読み方がわかる人なら一目でわかるくらい…
ピークとは呼べないもの。
ピークと呼ぶのなら、せめてこのくらいの高さがないと…。
(適当に書き加えてみました)

これはσ(・_・)一人だけの解釈ではないです。
Twitter上で特に有名な早野先生いわく、「え?これヒ?ークなの?こ?冗談を」
https://twitter.com/#!/hayano/status/147311388111536128
野尻先生は「いやあの程度の値ピークだとかいって議論しないでほしい。ビスマスだってないよ。」
https://twitter.com/#!/Mihoko_Nojiri/status/147094850536341508

そう、先のCs134と間違えたとされたBi214ですら検出レベルではないのです。


2.修正後の数値の体への影響について
BqからSvへ変換して人体への影響はどうか、という点については、まあ妥当な解釈だったと思う。


そして、他の専門家の「もっと高機能の測定機器を…」ってのも気になった。
多少形式が古いとはいえ、Ge半導体検出器はγ線測定では最高の感度持っているので、新しい最新機種に買い換えてもそれほど検査効率UPはしないですよ。
これ以上検出限界値を下げるには…
・U-8容器使うならさらに長時間(24時間以上)測定する
・測定時間を長くしたくないなら、マリネリ容器に詰めて測定する。
どちらかしか選択肢はないです。(時間と容器に制約がなければ、マリネリ&長時間測定が分析的にはベストだが、現実的ではない)

3.「検出せず」とは&4.今回の検出限界値について
検出せずの言い方は、たしか9月付けの通知で表現方法は統一されたはずなんだけどなぁ。
と思って確認したら、やっぱり統一されていた。
事務連絡 平成23年9月29日 食品中の放射性物質の検査結果について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q51k-att/2r9852000001qjsv.pdf
「不検出または定量下限未満の値の際には、「<○(定量下限値)」を記載。
セシウム-134及びセシウム-137の合計で検査結果を出している場合は、その値をセシウム-134の欄に記載。」

ま、口頭での表現は統一されていないかもしれないが。
(検出せず・ND(Not Detected)・不検出 など)

このNDとか検出限界とかは、言葉だけでは表現しにくいので、後日別途エントリーを書きたいと思います。
(とりあえず付け加えると、ND=0ではありませんが、検出限界値ギリギリまであるかというと…そういうものでもありません。これは実際に測定したスペクトルみれば、統計誤差の関係でNDになったのか本当に0に近いレベルでNDになったのかがわかります。)

5.カリウム40のデータについて
K-40の説明は、本当に不思議だった。
”部屋のコンクリートカリウムが多く含まれていると考えられ、これがカリウム40の測定に影響を及ぼし、測定が難航しています。”としていますが…

コンクリの部屋で測定しているところなんていくらでもあるんだけどなぁ。
というか、検出器は鉛の壁で覆われているから、外部の影響ってほとんど受けないんだけど。
それで測定出来ないっていうのが理解できない。
一度、試薬のKClをU-8容器に入れて測定してみればいいのに。それで一発でわかるから。
画像:横軸の数値が読み取りにくいから断定は出来ないけど、たぶんこのピークがK-40じゃないのかなぁ?

首都大学東京の先生、Ge半導体検出器についてはあんまり詳しくないのかな…?
たまたま12/11にあった市民講座で福士政広教授の話聞いたけど、実効線量の説明とかLNT仮説の解説とかその辺の知識はたしかな人だと思ったのですけどねぇ…
健康食品管理士協会
http://www.ffcci.jp/
健康食品管理士会関東支部研修会のお知らせ(市民公開講座
http://www.ffcci.jp/information/info.php?seq=204

SPECTを応用したと思われるこんな画像スライドで紹介してくれたし。


(勝手な推測:本来はSPECTとかの医療現場での放射線画像診断を専門としている方らしく、Ge半導体検出器自体は使い慣れていないのかもしれない。または研究室の別の人がミスしたのを先生がかばっているとか?なんにせよ、測定ミスしたことは事実ですので、今後気をつけてもらいたいです。)


番組のこれ以降は、もう検証ではないので、今回の記事もこれで終わりにします。

この検証をを無理矢理1行でまとめるならば…
スペクトルの解析が色んな意味で間違っていた
ですかねぇ?