蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

牛肉中の放射性物質検査結果のぶれの考察

ニュースでも流れてましたが、
福島県天栄(てんえい)村産の牛肉の緊急モニタリング検査結果が19報ではセシウム(Cs)が暫定基準値を超え、20報ではND、つまり検出されなかったため、厚生労働省は、この牛肉は放射性物質に汚染されていなかったとの認識を示しました。

食品中の放射性物質の検査結果について(第19報)別添10

食品中の放射性物質の検査結果について(第20報)別添5

厚生労働省のリンク設定しましたが、今後URLが変わる可能性があります)

なぜこのようなことになったのか?
それについて食品の化学検査をやっているものの視点で考察してみたいと思います。

可能性1.コンタミ

標準線源とか他の汚染サンプルが第19報時で牛肉に混ざってしまった。

これが微生物や化学検査なら可能性は十分にあると思うのですが・・・・

今回の放射線測定の場合では、個人的には考えにくいです。
理由は、セシウムを測定するときには、タッパー容器に入れて蓋をしているからです。
緊急時における食品の放射能測定マニュアル、9−10ページ参照)

サンプルごとに別の容器に入れて測定するので、普通に検査していればコンタミを起こす要素が見当たらないのです。
(ただし、検査サンプルを細切りしているときに下の台紙とかを交換しないで作業していればその限りではありませんが・・・さすがにそれはないと信じたいです)

第19報で測定したサンプル(容器に入っている状態)をもう一度測定すればコンタミか否かがはっきりするのですが・・・4/1時点では、まだ測定されていないみたいですね・・・。

可能性2.検査機器の故障
今回のケースでは、他の試料でNDとか5とか11とかの数値出しているのでありえません。

可能性3. 検査データから文書の形になったとき、ピリオド「.」が消えてしまっていた。
数値を見ると、有効数字二桁で成績を出しているようです。ただ、元の検査データは細かい数値が記載されていた可能性があります。
・・・この手の転記ミスは、上記の1,2よりはまだあり得るかな?
でも、他の数値と比べると明らかに高いから、ここだけ数値読み間違えるのは不自然な気もします。

・・・となると、検査サイドのなんらかのミスの可能性が一番高そうです。

そのミスは何かと考えると・・・
データが大量に羅列しているので、1行、あるいは2,3数行読み間違えた。
実際にありえそうなミスです。
でも、一つだけ高い数値を出しているので、今回のケースではむしろここを重点的にチェックしていたと考えられるので、可能性は低いかな?

誤って過去に測定した別のサンプルを測定してしまった。
これは、厚生労働省のページにある福島県産の検査結果データ一通り眺めましたが、該当しそうな数値がなかったのでこれも除外。なんせ、ヨウ素131がNDでしたもんね。

牛肉と思っていた数値が、実は標準線源だった。
個人的には、これが一番可能性高いかな?と思っています。
その根拠は・・・放射能測定法シリーズ 7の64ページ、表6−1の数値です。
「測定日における標準容積線源1個当りの放射能の目安(Bq) Cs137:300

今回の検査機関でどのような標準線源を使っているのかはわかりませんが、
第19報の牛肉でのCs137の測定値がやっぱり300ベクレル。

私的な解釈ですが、只の偶然には思えないのです。
もし標準線源にCs134が200ベクレル前後含まれているとしたら・・・

もしこのミスだとしたら・・・
最後に測定するサンプルが天栄村産の予定で、最後に確認のために標準線源を測定するつもりだったのが、
なんかの拍子で天栄村産のサンプルを測定し忘れて(^◇^;)、標準線源を天栄村産サンプルと勘違いして測定した・・・

最終的にどういう原因で異なる結果になったのかは、後日報告されると思いますが、
個人的には最後に上げた理由ではないかと推測してみました。

最後に・・・個人的には、「分析結果早く出せ!」という圧力というか雰囲気が、こういった事態に結びついた大きな要因の一つではないかと感じます。

もっとも・・・こういう緊急事態でも誤った結果にならないように、
例えばチェックを2,3人で行うとか、
出てきた数値に疑問を抱くとか(今回は肉の他に原乳や魚の結果も出していて、1つだけ高い数値であるので違和感は感じるはず)

もし検査側のミスであったとしたら防止できたはずなので、検査担当者にはより一層注意して測定に取り組んでいただきたいものです。

・・・しかし、エビも分析屋なので、この手のミスが絶対無いとは言い切れません。
他人事とは思わず、私も測定や検査成績を出すときに際して、一層注意して取り組んでいきたい所存であります。

そして、検査側のミスでなかったら・・・暴言吐いてごめんなさい<(_ _)>

正直、このたびの膨大な数の検査には同情しています。疲労も溜まっていて、大変なはず。(原発現場で作業している人達ほどではないにせよ、検査している人達も非常事態のため少人数で頑張っているはず)


ここのブログを見に来てくれた方も、あまり検査サイドを攻めないで欲しいです。

(・・・検証しておいてなんだけど(^◇^;))


※前にも書きましたが、食品の化学分析はやっていても、放射線関係には詳しいわけではないので、間違いがあったら是非指摘をお願いします。
そして、今日はエイプリルフールなので誤りがあっても少しは見逃してください(^◇^;)

2011/04/09追記

福島県天栄村産の牛肉、検査機関ミスの可能性 (YOMIURI ONLINEより)

暫定規制値を超える放射性セシウムがいったん検出されたものの、再検査で放射性物質が検出されなかった福島県天栄村産の牛肉について、厚生労働省は8日、検査に使用した容器を包んでいたビニール袋に同セシウムが付着していたと発表した。

厚生労働省のHP

※ 3月31日福島県での緊急時モニタリングの検査結果において、天栄村の牛肉から暫定規制値を超過する放射性セシウムが検出されました。その後、念のた
め行った、同一個体からサンプリングした検体からは放射性セシウムは検出されなかったことから、これらの検査結果について検証を行ったところ、検査機関か
らの報告によると測定に使用した容器を包んでいたビニール袋から放射性セシウムが検出されたため、ビニール袋に放射性セシウムの粒子が付着した可能性があ
ることが判明しました。

 

・・・セシウムって、そんなにビニールに付着しやすいものなのでしょうか?

付着したといって、500ベクレルまでの濃度になるのでしょうか?


付着していたということ自体はよろしくないのですが・・・
どのくらいの濃度が付着していたのかがわからないと、ビニールに付着したのが原因とは断言できないと思うのですが。

というか、最初に合計510ベクレル検出した肉の再検査結果も知りたい。
半減期が短いヨウ素じゃなくて、この件はセシウムですから、同じサンプルで再測定することができるはずなのですが・・・。