蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?

6月8日に開催された、食品表示基準に係る説明会を聴きにいってました。

話を聞いているうちに、こんな話が出てきました。

すべての消費者向け加工食品及び添加物への栄養成分表示の義務付け

最初、さらっと流していたけど・・・
添加物も!?

それって、店頭に置いてある食品添加物ってこと?

ちょっといくつかのケースを考えてみる。

重曹(炭酸水素ナトリウム)

えーと、これは100%重曹(NaHCO3)だから、栄養表示すると…
100gあたり

熱量:0kcal
たんぱく質:0
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:27.4g(食塩相当量:69.6g)

うん、(食塩相当量)がついたことによって、すごい変なことになったね。

あ、ちなみになぜ100gあたりで熱量を計算しているかというと、分析方法が100gあたりで結果を出しているため。

栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

1gあたりに書き直してみても、
ナトリウム0.3g(食塩相当量:0.7g)と、食塩が含まれていないのに食塩がほとんどって感じに見えちゃいますね。


次、調味料としてハイミー。
構成成分は、L−グルタミン酸ナトリウム 92%、5’―リボヌクレオタイドナトリウム 8%だそうな。
栄養成分が書かれていたのでそのまま書いてみる。
http://www.ajinomoto.co.jp/products/detail/?ProductName=hime
0.4gあたり(3ふり)の標準栄養成分
エネルギー:1.1kcal
たんぱく質:0g
脂質:0g
炭水化物:0g
ナトリウム:49mg
アミノ酸:0.3g

ハイミーの表示に基づき私が計算して、食品表示法的に書くとすると、
100gあたり【0.4gあたり】
熱量:292kcal【1.17kcal】
たんぱく質:79.5g【0.32g】
脂質:0
炭水化物:0
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)【50mg(食塩相当量:0.1g)】

これは、グルタミン酸ナトリウムのうちグルタミン酸たんぱく質と見なし、核酸については熱量の換算係数が不明のため0とした場合。

これ、たんぱく質を公定法で分析するとどうなるかというと…

100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質56.7g
脂質:0
炭水化物:45.3g
ナトリウム:12.3g(食塩相当量:31.1g)

5’―リボヌクレオタイドナトリウムには2種類ありますが、この製品がその一つグアニル酸ナトリウムですべて占められているいるとした場合の計算です。

なぜたんぱく質量が違うのかというと…
上:グルタミン酸ナトリウムの理論値
下:公定法で測定した場合の数値(係数:6.25)

本来なら理論上は、グルタミン酸ナトリウムの係数は12くらい、グアニル酸ナトリウムの係数は5.5くらいですが…
添加物の係数は表として整理されてないので6.25を使うことになるので、こんなことになります。

さらに、炭水化物は差し引き計算で求めるため存在していないのにあることになり、その結果、熱量も増えてしまうことに。


続いて、食用色素 赤
デキストリン85%、食用赤色102号15%とのことなので、
この表示に従って食品表示法的に書くと
100gあたり
熱量:340kcal
たんぱく質:0g
脂質:0
炭水化物85g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)
デキストリンは炭水化物として計算しています。

これを公定法で分析すると…
100gあたり
熱量:400kcal
たんぱく質29g
脂質:0
炭水化物71g
ナトリウム:11.4g(食塩相当量:28.8g)

に、多分なります。食用赤色102号の分子式はC20H11N2Na3O10S3で、
窒素が含まれているので分析上はたんぱく質と見なされ、換算係数6.25で自動的にやるとこんな謎数字になります。


とりあえず3つ計算してみましたけど…
どれも分析値が現実とかけ離れた酷い結果に。

公的な分析方法があくまで栄養成分の分析法なので、何も考えず添加物に当てはめるとこんなことになるということです。


結論
・そもそも、一般消費者が購入する食品添加物は大量に使うことがないので、栄養表示はしない方がいい
でも、法律となってしまったからこれは多分簡単に変更することは難しいと思われる。

それなので、こちらの意見も提案。
添加物にも栄養成分を表示するなら、個別成分をきちんと定量して、それから熱量を求めること
現在の分析法では、ビタミン、ミネラルと、有機酸や糖アルコールの一部を除き添加物の分析法について何も述べられていません。
別添 栄養成分等の分析方法等 http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf

それゆえ、食品添加物には個別分析を使用してもよいとの文章と、個別分析については規定の方法で判定はしないとの文章を組み込んで欲しい。
規定の方法で分析する方がおかしな結果になるのは明らかなので。
(個別分析だけなら現状の分析方法等でも使用して構わないのだが、最終判定は規定の方法でと明記されている)

食塩を含んでいない食品添加物に限り、ナトリウム表示だけにする
食品添加物には、○○○ナトリウムというものはたくさんあります。
明らかに食塩(=塩化ナトリウム)ではないので、食品添加物に限りナトリウム表示だけにすればよいと思います。

この2点を提案したいと思います。


タイトルの”添加物への栄養成分表示の義務付け、大丈夫か?”は、正確に書くとこうなりますかね。

「そんな分析法で大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ。」