栄養表示成分の分析についてざっと語る
今までは健康増進法に基づく栄養表示基準で、2015年4月1日からは食品表示法が施行され食品表示基準となりますが、
栄養成分の表示について定められています。
今回は、普通の化学分析とはちと異なる、栄養成分の分析に大まかに語ってみようと思います。
なお、現在の分析法はこちらになります。
食品表示法 別添 栄養成分等の分析方法等
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150331_tuchi4-betu2.pdf
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/150914_tuchi4-betu2.pdf
栄養表示で必ず表示されるのは、
・熱量
・たんぱく質
・脂質
・炭水化物
・食塩相当量(ナトリウム)
この5つの分析法を説明していきます。
・たんぱく質
たんぱく質そのものは測定出来ません。そのため、窒素を測定して、その値に一定の係数を掛けてたんぱく質量として求めます。
・脂質
脂質すべて全種類を測定することは出来ません。そのため、エーテル等の有機溶媒で脂質をすべて抽出し、重さで求めます。
・食塩相当量
食塩、すなわちNaClそのものを測定することは出来ません。NaまたはClを測定して換算して求めます。
食品表示法では、ナトリウムを測定して換算することになっています。
…今まで書いたように、
たんぱく質は窒素からの換算、
脂質は正確に言えば脂質以外の成分も微量ながら含まれていて、
食塩相当量はナトリウムを測定しているため、食塩以外の食品由来ナトリウムも測定されてしまう
厳密に言えば、正確な数値ではありません。
しかし、%オーダーでみれば、この程度のずれは測定の誤差範囲に収まってしまうので、ほとんど問題になりません。
(食品中にあるすべてのものを分析するのは不可能のため、他に適切な方法がないともいう)
・水分
乾燥減量やカールフィッシャー法などにより、水分を測定します。
・灰分
灰化して有機物及び水分を除いた残留物の量のことです。
いきなり表示にないものの分析が出てきました。これは、炭水化物を求めるために必要なデータなのです。
・炭水化物
炭水化物は、基本的には測定せず、計算で求めます。
先に挙げた分析法等には、こう書かれています。
「炭水化物は、当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分量を除いて算出する」
式にすれば、こういうことです。
炭水化物=測定食品量−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量)
水分、灰分を測定したのはこのためです。
なお、この計算では食物繊維も炭水化物として計算されます。
食物繊維の表示をするときは別途食物繊維を測定し、先の計算からさらに食物繊維量を引いたものを糖質とし、糖質と食物繊維の合計量を炭水化物とします。
炭水化物=食物繊維+糖質、
糖質=測定食品−(たんぱく質量+脂質量+水分量+灰分量+食物繊維量)
・熱量
ここまで来て、熱量を計算するのに必要なたんぱく質・脂質・炭水化物のデータがそろいましたので、
修正アトウォーター法に基づき計算します。
求めたたんぱく質・脂質・炭水化物の量に、以下の係数をかけて熱量を求めます。
たんぱく質:4kcal/g
脂質 :9kcal/g
炭水化物:4kcal/g
栄養成分の基本表示の分析についてざっと語ってみました。
普通のイメージの分析とは違っていると思いますが、これも分析です。
なお、もう少し詳しく知りたい方は、一般財団法人食品分析開発センターSUNTEC のメルマガを参照してください。
栄養成分分析の実際
https://ssl.mac.or.jp/mail/121201/02.shtml
栄養成分分析の実際 その2 〜栄養表示(ビタミン)〜
http://www.mac.or.jp/mail/130201/03.shtml