蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

食品添加物による健康被害事例を探した

食品添加物は、”とにかく体に悪い”とのイメージで見られています。

つい最近もこんなのが…。
思ったより深刻!加工食品のデメリットと避け方 (読まなくていいです)
http://news.mynavi.jp/c_cobs/news/googirl/2012/10/post-1945.html

最初は、この記事の誤りを指摘していこうと思ったのですが…
ここで単発記事を一つ指摘しても、また同じような記事が世に出回ると考えてしまうとやる気が…


ここで発想の転換をしてみました。


とにかく悪いとの論調が多い食品添加物

では、実際に食品添加物が原因の健康被害事例って、どれくらいあるのだろうか?

というわけで調べてみました。
(なお、表示違反とか基準値超えのようなものは、健康被害は出ていないので除外します。)


1.森永ヒ素ミルク事件(1955)

経緯・症状:西日本で粉ミルクを飲んだ乳幼児が、衰弱死や肝臓肥大を次々に起こした。 世界最大級の食品公害となった。(死亡130名、発症発症12,001名)
原因:粉ミルク製造工程で大量のヒ素を含む第二リン酸ソーダを使用したことによる。
(日本の食品衛生史上、最も大きな出来事と認識している。)

公益財団法人 ひかり協会
http://www.hikari-k.or.jp/jiken/jiken-e.htm

失敗百選 〜森永ヒ素ミルク事件(1955)〜
http://www.sydrose.com/case100/302/


2.ズルチンによる急性中毒
代表例(1964)
経緯・症状:自家製のあんつけ餅を食べたところ、30人注6人が頭痛、嘔吐、手足のしびれを訴え、うち一人(73歳)は意識不明の重篤な症状で翌日死亡した。
原因:ズルチンの大量摂取による急性食中毒。ズルチンは比較的毒性が強く、過量摂取すると悪心、嘔吐、めまいなどの症状を起こす。
(ズルチンの甘さは砂糖の約250倍あるが、量を増やしても甘みは強くならないという変わった特徴があるので、うっかり大量に使いやすい添加物だったのであろう…)

ズルチンによる食中毒事件
食品衛生学雑誌 Vol. 10 (1969) No. 2 P 112-113
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shokueishi1960/10/2/10_2_112/_article


3.ソルビトールによる急性中毒
代表例(1973)
経緯・症状:ゼンザイに、鏡開きの餅を入れて食べたところ、39人のうち35人が下痢を主とした中毒の届け出があった。
原因:食べたソルビトールの量は15.4〜154.5gとなり、甘味剤のDーソルビットによる急性中毒と断定された。
(なお、ソルビトールは20〜30gで緩下作用を示すとされています)

「インターネット随想」⑮経済性食中毒
http://blog.goo.ne.jp/kuroyan1259/e/1bfa9a665e8da90604380cebe8035457


4.ニコチン酸
代表例(1986)
経緯・症状:挽肉をハンバーグにして食べたところ、食べた直後から発疹、皮膚温度上昇、皮膚紅潮などの症状が起きた。
原因:肉を赤く発色させ、新鮮に見せるためにニコチン酸を不正に添加した。
(昭和55年から56年にかけて,日本各地でニコチン酸の過剰摂取による一過性の中毒事例が報告されたため、昭和57年より食肉および鮮魚介類には使用してはならないことになりました。)

東京衛研年報,38,229-232,1987.
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/1-50/pdf/ar-38.pdf


5.その他 
亜硝酸ナトリウム、90%酢酸、過酸化水素による事例

ズルチンやソルビトールの他の事例を含め、これにまとめられています。
千葉大学教育学部研究紀要 第31巻 第2部
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/AN00179534/KJ00004299328.pdf


とりあえず、ネットや私が持っている書籍で確認できた事項は以上になります。

これを添加物ごとではなく、事例的な分類をしてみると、

A.添加物に有害な不純物が混じっていた。(添加物の使用法としては適切):1
B.添加物そのものの毒性が高かった。:2
(ズルチンは死者も出ていて、毒性も強いので昭和43年に使用が禁止されました)
C.誤って大量に使用した。(別のものと間違えたのも含む):3,5
D.意図的に不適切な使用をした。:4

この4パターンに分類されると思います。

これから、
Aの対策:品質のしっかりした食品添加物を使用する
→これは、ヒ素ミルク事件後、食品添加物公定書で規定されています。

Bの対策:有害な添加物を使用禁止にする。実際、昭和40年代は添加物の使用禁止ラッシュ時代であるとも言えます。
http://www62.tok2.com/home/gedow666/food/histry/jiten/eisei.htm
もっともズルチンに関しては
…時系列で見ると昭和22年に死亡事例が報告され、何件も事例があるのに使用禁止になったのが昭和43年なので、平成の今の感覚では遅すぎるとは思いますが。

Cの対策:添加物ごと、食品ごとに適切な量を使用する。
→現在、少なくとも平成に入ってからは、食品添加物としての用途としての事故は起きてないと思います。
・・・いわゆる健康食品としての事故事例はあるのですが(^◇^;)

Dの対策:食品添加物を用途外や禁止されている方法で使用しない。
ニコチン酸のように肉には使用禁止にするなどの対策は行われていますが…
困ったことに、頻繁ではないにしろ、平成に入ってからでもたまに見かけます。

http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2004/pdf/55-31.pdf
(ちなみにこの年報はソルビトールニコチン酸の事例がたまたま掲載されています。)


 で、とりあえず私が調べた限りでは、上記A〜Dにあげたような事例以外で、
食品添加物による健康被害が起きた事例を見つけることは出来ませんでした。
(もし他にあったら指摘してください。)

第二次世界大戦後から昭和40年代までは、添加物の品質や、添加物そのものの毒性に問題のある時代でもありましたが、
その後、添加物の規格基準制定から始まり、科学的に妥当とされる安全性評価、食品監視員を中心とした監視指導の徹底など、様々な進歩が重なりあって…

平成になった現在では、食品添加物による健康被害はまずありえないと言っていいでしょう

(ただ、残念ながら現在でもC、Dのケースを完全に防ぐことは困難でしょう…。)