蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

中国内で牛乳からアフラトキシンM1が検出されたことに関する考察

中国の牛乳から発がん物質検出、ネットで怒り爆発
中国の乳製品大手、蒙牛の牛乳から発がん物質が検出されたことが分かり、消費者らがインターネット上で食品業界への怒りを爆発させている。

検査は中国の監督当局が全国の乳製品を対象に実施。国営新華社通信によると、同社の牛乳から24日、肝がんを引き起こす恐れがある有害物質「アフラトキシン」が検出された。牛の餌が汚染されていたとみられる。
http://www.cnn.co.jp/world/30005074.html

CNNより、こちらのニュースの方がより詳しいです。

蒙牛の純牛乳から発がん性物質 問題製品は未出荷

質検総局が発表した検査報告書によると、蒙牛の製品に基準値を超える有害物質が含まれていることは、国家加工食品質量監督検験センター(福建省福州市)により確認された。検出されたアフラトキシンM1の実測値は1.2μg/kgで、国が規定する上限の0.5μg/kgを140%上回った。
http://j1.people.com.cn/94476/7688120.html


まず、アフラトキシンM1とはなにか?
アフラトキシン類は、Aspergillus flavus、A.parasiticus、A.nomius 等のカビが産生するかび毒(マイコトキシン)。
そのうち、アフラトキシンB1及びB2が動物体内で代謝されて、アフラトキシンM1となる。
発ガン性があることで知られており、アフラトキシンB1と比べると2〜10%。(それでも十分強い)

詳しくは、厚生労働省にある薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会の資料を参照してください。
http://mcaf.ee/tix16


簡単に流れ図にすると、

アフラトキシンB1に汚染された飼料
を牛が食べる

牛の体内で代謝され、アフラトキシンM1の形になる

乳中に排泄

牛乳中にアフラトキシンM1が検出される

※他のカビ毒と違い、牛乳がカビに汚染されて作られるわけではないです。


アフラトキシンM1が牛乳から規制値を超えて検出されたということは、中国の牛の飼料がアフラトキシンB1に汚染されていることを意味します。

アフラトキシンB1は家畜にも有害ですし、牛乳中のアフラトキシンM1も有害。
なので、中国政府は飼料のアフラトキシン調査を行い、出来るだけアフラトキシンに汚染された飼料が出回らないよう対策をする必要があります。

…というだけなら簡単ですが、実際はそう単純ではありません。
飼料を中国内で全て賄っているのなら、国内でアフラトキシンB1を産生するカビが増えないように具体的な対策をすることも出来るでしょう。

ただ、実際はどうも輸入が多いらしいです。

中国の食糧大量輸入、国際市場に重圧
http://www.epochtimes.jp/jp/2011/05/html/d89102.html

牛の飼料としては、トウモロコシが多いです。そして、トウモロコシはアメリカが大生産国です。
そして…アメリカ産のトウモロコシって…アフラトキシンの検出率は低くありません。
(輸入時検査等において食品衛生法違反となった事例に関する情報のページ。トウモロコシって意外とあります)
http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/ihan/index.html

結局は、アメリカがアフラトキシン産生菌を防ぐ効率的な対策をしないと根本的な解決にはならないのです。
(自然を相手にするようなものなので、これまた簡単にはいきませんが)

とりあえず、中国が対策するとしたら、輸入飼料に対して規制値を設定して出来るだけ水際で押さえ、高濃度に汚染された飼料が出回らないようにすることでしょうね。

なお、日本では飼料に規制値が設定されています。(乳牛用では10ppb)
飼料の有害物質の指導基準の制定について
http://www.famic.go.jp/ffis/feed/tuti/63_2050.html


追記 三笠フーズ事故米事件のときに少し調べたのですが、
2008年の1月〜8月までのアフラトキシン違反事例(10ppb以上)を調べたときは、
・とうもろこし及びその加工品:35件
アフラトキシンB1濃度10〜61ppb、原産国:全部アメリカ)
・ピーナッツ、落花生及びその加工品:29件
アフラトキシンB1濃度10〜160ppb、原産国:中国16,アメリカ5、インド3、南アフリカ2、オーストラリア・アルゼンチン・ペルー各1)
ハトムギ:9件
アフラトキシン濃度12〜25ppb、原産国:タイ7、ベトナム2)
アーモンド:4件
アフラトキシンB1濃度12〜69ppb、原産国:アメリカ3、スペイン1)
乾燥イチジク:3件
アフラトキシンB1濃度10〜16ppb、原産国:イラン2、アメリカ1)
・カカオ豆:3件
アフラトキシンB1濃度13〜139ppb、原産国:ベネズエラ
ナツメグ:2件
アフラトキシン濃度13、490ppb、原産国:インドネシア
その他(チョコレート、ケツメイシ、ごま )

…でした。