蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

生茶葉と荒茶の放射線規制値について考察

神奈川県産の生茶葉から放射性セシウムが検出されてから色々騒がれていましたが、今はこういう流れになっているそうです。

アサヒ.コム(2011年6月1日15時2分付け)より
葉から国の基準を超える放射性セシウムが検出された問題で、菅政権は1日までに生の茶葉を乾燥させた荒茶の段階でも検査し基準を超えた場合は出荷停止にする方針を固めた。
http://www.asahi.com/food/news/TKY201106010256.html

厚生労働省農林水産省で意見が対立していたと報道されていました。
ここで焦点となっていたのは・・・

・荒茶を測定するか否か

荒茶(あらちゃ)とは:収穫、製茶しただけの茶葉(参考HP
市販されているお茶は、荒茶をさらに細かく刻まれたりブレンドされる。

生茶葉を乾燥させると何故濃度が上がるのか?
重さが生茶の5分の1になるためとニュースでは言われてますが・・・
相対的に濃度が高くなるだけで、放射性セシウムの絶対量は変化しないです。
ちょっと計算してみます。

・・・荒茶の水分量は見つけられなかったので、普通の緑茶で代用します。

食品成分データベースによりますと、緑茶の水分量は
抹茶:5%
玉露:3.1%
煎茶:2.8%

一方、生茶葉の水分量は75−78%だそうです。
http://www.chinesetea-k.com/article/13756815.html

生茶葉の水分量を75%、緑茶の水分量を3%として、グラフにしてみました。

生茶葉(茶成分+水分)を1000gとして描いています。

Photo_3








乾燥しただけでは、単に水分量が減っただけで、茶成分そのものは減っていません。
また、放射性セシウムは茶成分に残ります。そのため、このグラフは茶成分を放射性セシウムと読み替えても大差はありません。

このままでは、放射性セシウムの絶対量は、両者ともに250ベクレルと同じです。
ここで重量単位でラフな計算をすると・・・
生茶葉:250÷1000g(茶成分+水分)=250Bq/kg
緑 茶:250÷257g(茶成分+水分)=970Bq/kg

こういう過程で、荒茶は規制値を超えやすいものになってしまうのです。

(なお、http://www.weblio.jp/cat/food/shkli で他の野菜の水分量を調べてみると、90%くらいの作物が多いようです)


この理屈を説明したところで・・・

お茶の規制値、どうしたらいいでしょうか。

おっと、その前に参考情報として、ここのHPを紹介。
基準値の根拠を追う:放射性セシウムの暫定規制値のケース

まず、生茶葉は500Bq/kgでいいでしょう。

では、荒茶を粉砕ブレンドして販売される普通の緑茶は?
これは、個人的には普通にお茶を入れたときのように、飲み物としてのお茶として測定するのがベターかなと思います。
(飲料と同じ扱いとして200Bq/kg)

こう書くのには一応根拠というか前例がありまして・・・
農薬の個別試験法には、前処理として”検体9.00gを100℃の水540 mLに浸し・・・”のように飲み物としてのお茶として扱う事例があるからです。
例)http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/zanryu3/2-001.html

ただし、抹茶のように全量摂取するものは食品として扱い、500Bq/kgが妥当と考えます。(これも農薬個別試験法では抹茶とその他お茶では区別されている)

荒茶も、緑茶として書いてきたように扱うのがベターではないかと考えます。


・・・しかし、ここで悩ましいのがお茶葉そのものを食材として料理する事例が近年増えていること。

(例:検索すればいくらでも出てきます)
http://www.fuji.ne.jp/~aitouen/ryouri.html
http://www.city.shizuoka.jp/deps/norin/tea/tea8.html
http://www.maiko.ne.jp/study/column6.htm

昔のようにお茶は飲むものという前提であれば、生茶葉と市場に出る緑茶で扱いを変えた方がいいと思います。

しかし、飲用以外にも、食材として使うとなると・・・
”野菜類”に分類されるのか”その他”になるかはわかりませんが、荒茶も規制値は500Bq/kgにするしかないかな〜、というのが最終結論です。

もちろん飲用目的の消費者が多いのはわかっては居ますが、人によっては食材として見ているかもしれませんからね。

となると、荒茶でも生茶葉と同様の規制値という政府の方針は、おかしなことではないのだなぁ・・・。
我ながら書いていて、こういう結論になるとは想像してなかった(^◇^;)