蛭子ミコト:ブログ版second

主に食品添加物や食品衛生のことについて書いていくブログ

食品添加物で生肉を消毒できるか?

皆様ご存じのように、腸管出血性大腸菌による食中毒事件が起き、死亡者まで出る痛ましい事態になっててしまいました。


今回はちょっと趣向を変えて、牛生肉を食品添加物で消毒みたいなことをして、生食出来るかどうかを考えてみたいと思います。

肉の前提。
・生肉のブロック肉の表面には細菌が付着している。
・内臓の中にも細菌は存在している。

食品添加物の前提
・現在の法律では生肉に使えない物もあるが、今回は考慮しない。(あくまで可能性を考える)



ソルビン酸カリウムなどの保存料全般
・・・効果は期待できません(^◇^;)
理由は単純で、保存料は専門用語で言えば静菌作用、つまり細菌の増殖を抑える効果しかないので、元々付着している細菌を殺すことは出来ません。
増えるのを抑えても、O-157カンピロバクターは少量の菌数で発症するため、解体後にかけてもすでに手遅れです。

俗に言う日持ち向上剤グリシン、酢酸ナトリウム、カラシ抽出物)は基本的に保存料よりも効果が弱いので、これもダメです。

亜硝酸ナトリウムなどの発色剤
日本では発色剤に分類されていますが、亜硝酸塩がボツリヌス菌などの増殖を抑制することが知られています。
保存料よりはマシな気がしますが・・・やはり抑制なので効果はイマイチかと思われます。
しかも、これに長時間漬け込んでいたらハムもどきになってしまうので、生肉とは呼べない状態になってしまいます(^◇^;)



ある意味本命の殺菌料。各種微生物を殺す効果があります。これが生肉に適用できるか!?

過酸化水素
これの3−5%溶液は、あの消毒薬のオキシドールです。
表面の消毒には効果がありそうです。
血や肉にも反応しますので、ドボンとつけるくらいのそれなりの量が必要になります。
しかも、表面の血に反応して、ブロック肉の表面がしゅわしゅわーと泡立ちます(笑)

ただし、過酸化水素そのものも分解しやすい性質があるので、食肉加工現場で使用するには向いてない気がします。

次亜塩素酸ナトリウム
消毒では定番のものです。この溶液にドボンと漬け込めば、確実にブロック肉の表面に対する消毒効果があると思います。(有機物の塊である肉なので、消毒効果は野菜とかと比べると落ちますが、漬け込むレベルなら表面の消毒はできる・・・と思う)
使用基準として、「最終食品の完成時に分解または除去すること」となっていますが、トリミング処理をし、さらに水で洗えば基準も満たせるかと。
・・・ただし、これは塩素臭と言おうかプールの消毒の臭いがしますので、臭いがしないレベルまでに除去洗浄するのが大変かも。

高度サラシ
消毒の原理は次亜塩素酸ナトリウムと同じ。臭いは次亜塩素酸ナトリウムよりは弱いそうなので、こっちの方が現実的かもしれない。

亜塩素酸ナトリウム
これは漂白剤のグループになりますが、同様の塩素系消毒効果があるので。同様に漬け込んだあとにトリミング処理&水洗浄なら可能性アリ。

次亜塩素酸水
電解水ともよばれるもの。次亜塩素酸ナトリウムよりも有効塩素濃度は低いが、溶液が酸性のため活性の高い次亜塩素酸の形で存在しているため、同じ有効塩素濃度の次亜塩素酸ナトリウムよりも殺菌活性が高いという特徴があります。
これが塩素系消毒の殺菌料の中では一番使用しやすい気がする。

というわけで、食品添加物のうち塩素系の殺菌料なら、ブロック肉を漬け込んだ後、トリミング処理(&水洗浄)すれば表面の消毒はできるかも?、という可能性を示唆しました。トリミング処理すれば、中身は生のままのはずですし。


・・・まあ、わざわざ考察しなくても、エタノール(いわゆるアルコール)で殺菌料と同じことが出来ますけどね(^◇^;)
スプレーではあまり効果がないでしょうけれど、ある程度の時間漬け込めば消毒効果はあると思われます。

さらに言えば、ここに取り上げられていますが、
食の安全情報blog 笛を吹くということ 〜TBSラジオdig 食中毒
http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20110509

表面を焼く(いわゆる)たたき状態にして表面の菌を殺してからトリミングする

こちらの方法の方が効果は高いでしょうね。

ここで注意。
あくまで消毒できるのはブロック肉の表面だけです。
レバーなどの内蔵肉の内部には効果がありません
また、効果があるほど漬け込んだならば、もはや生肉とは呼べない状態になります。(というか食べられない状態になりそう・・・)


注)次亜塩素酸水などで消毒できるとの可能性を書きましたが、実際にこのような作業を法的に行っていいかどうかは別問題なので、もしやってみようと思う方がいたならば、厚生労働省都道府県、保健所にお問い合わせください。